大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和47年(う)1857号 判決

本籍

東京都目黒区目黒本町四丁目一七〇番地

住居

同町四丁目八番二〇号

医師

山中秀男

昭和二年七月二六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和四七年五月一三日東京地方裁判所が言い渡した有罪判決に対し、弁護人から適法な控訴の申立があつたので、当裁判所は、検事中野博士出席のうえ審理をし、つぎのとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人田中浩二作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用し、これに対して、当裁判所は、つぎのとおり判断する。

所論は被告人を懲役六月および罰金九〇〇万円に処した原判決の量刑は重過ぎるというのである。

よつて所論に徴し、本件訴訟記録を調査し且つ当審における事実取調の結果を総合して考察するに、被告人は、所得税をほ脱する目的で、診療収入の一部を除外して架空名義の預金を設定するなどの不正な方法で、所得を秘匿したうえ、昭和四一年度分と昭和四二年度分の所得税について原判示差額を免れたのである。その脱税の方法が計画的で、申告課税総所得金額が実際の課税総所得金額よりはるかに少額であることや本件犯行の動機に特に汲むべき事情が認められないことなど、本件犯行の動機、態様などを合わせ考えると、被告人が現在反省して誠実に納税していることや被告人に前科がないことやその外被告人の性行、経歴、家庭の状況など、被告人に利益となるべきすべての事情を斟酌しても、原判決の量刑を重過ぎると認むべき事由を見い出すことができない。論旨は理由がない。

よつて、刑事訴訟法第三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 三井明 判事 石崎四郎 判事 杉山忠雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例